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不動産契約の交渉レベルを上げるための基礎用語③ ~抵当権編~

執筆者:トキ

抵当権編

店舗物件を借りる際、抵当権が設定されている物件を多くみかけます。抵当権とはいったいなんでしょうか?この章では抵当権付き物件に関する賃貸借契約に関係する各当事者の立場やその内容をひもといていきます。

重要事項説明

店舗物件を契約する際に不動産業者から「重要事項説明書」の説明があり、その中には抵当権に関する事項というものがあります。「登記簿に記載された事項」甲区・乙区とあり、甲区では持分などの権利に関する事項、乙区の中に抵当権の設定などに関する内容があります。

通常、店舗物件の申し込み後、入居審査があり、契約予定の段階で不動産業者が「重要事項説明書」を作成します。早い段階での建物概要を知りたければご自身で「登記簿謄本」を取得することも可能です。

登記簿謄本の取得方法

登記簿謄本(最近は登記事項説明書とも呼ばれます)はどなたでも取得することが可能です。建物の登記情報は法務局で管理しており、所轄の法務局で登記簿謄本を取得することができます。所轄の法務局を調べるのはこちら→法務局:管轄のご案内

窓口の受付や郵送でも対応していますし、登記情報提供サービスなどを利用しインターネット上で概要を調べることもできます。※登記情報提供サービスでは登記官の認証分等がない為、法的証明力はありません。

登記簿謄本を申請する際は建物を特定する情報として「地番」、「家屋番号」などが必要となります。普段利用している「住居表示(住所)」とは異なりますのでご注意ください。管轄の法務局に電話で問い合わせすることも可能です。※インターネット上で『市区町村:地番・家屋番号』などで管轄の法務局・出張所などの連絡先を検索できます。

抵当権の当事者関係

建物に登記される抵当権の設定は「抵当権設定者」(主に物件所有者)が「抵当権者」(主に銀行などの金融機関)に対する債務の担保としての性質を持ちます。当事者間においては登記をせずとも成立しますが第3者との間において登記が対抗要件となりますので、一般的に登記簿謄本を信頼します。

それでは店舗物件を借りる際の当事者関係はどのようになるのでしょうか?

抵当権設定登記前に店舗を借りる場合

この場合、店舗の借主は「抵当権者」「買受人」に対して店舗の賃借権を主張できます。仮に抵当権が実行され、競売になり、新しい買受人が現れても物件を明け渡す必要はございません。安心して店舗営業を続けていけます。

抵当権設定登記後に店舗を借りる場合

この場合、店舗の借主は「抵当権者」「買受人」に対して店舗の賃借権を主張できません。仮に抵当権が実行され、競売になり、買受人から明渡しを求められたときには、6か月以内に店舗を明け渡さなくてはならないことになります。

また貸主に預けた保証金(敷金)についての清算は、買受人に求めることはできず、当初の貸主に求めることになります。

なお、買受人から明渡しを求められない場合においても、買受人から新たに賃借権の締結を求められ、新たに保証金(敷金)の預託を求められることがあります。

『店舗の賃貸借契約』と『抵当権の設定登記』、どちらが早いかでその権利関係は大きく異なります。登記簿謄本の内容を信頼して契約することになりますが、その取得する時期も重要となりますので注意が必要です。

改正法の解説 (抜粋)

※民法第395条関連 平成16年4月1日施行

短期賃貸借制度の廃止に伴い、民法及び民事執行法の一部改正で主要な事項は、次の通りです。

  1. 抵当権設定後の賃貸借は、期間の長短、期間の定めの有無にかかわらず、すべて、抵当権者及び買受人に抵抗できないこととされた。
  2. 抵当権設定後の建物賃貸借であっても、競売手続が開始される前から使用又は収益をしている建物賃借人(以下「建物使用者」という。)は、買受人がその建物を買い受けた時から6ヶ月間は、建物の明け渡しを猶予される(明渡猶予期間。民法新395条1項)。ただし買受人が買い受けた時より後に、買受人が建物使用者に対し、相当の期間を定めて1ヶ月分以上の建物使用料の支払いを催告したが、建物使用者が催告期間内に建物使用料を支払いしないときは、上記の明渡猶予期間は認められない(民法395条2項)。
  3. 抵当権に後れる賃貸借であっても、その設定について登記がされており、かつ、その登記前に登記がなされたすべての抵当権者が同意をし、その同意について登記がされたときは、当該抵当権者及び競売における買受人に対抗できる(民法387条)。
  4. この改正法の施行の際に、現に存する抵当不動産の短期賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)であって、当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものについては、従前どおりの内容による短期賃貸借保護の規定が適用される(法附則5条)。
  5. 6ヶ月の明渡猶予期間経過後においても引渡命令の申立てができるように、引渡命令の申立期間が通常の場合は6ヶ月とされているが、買受けの時に民法395条1項に規定する建物使用者が占有していた建物の買受人にあっては、申立期間が9ヶ月に伸長された(民法83条2項)。

抵当権まとめ

以上、抵当権の内容を理解し、店舗運営に役立てていただければと思います。最後に確認を含め、契約時・競売実行時における重要な部分をまとめておきます。

  1. 契約時に抵当権設定登記があるかどうか。
  2. 信頼する登記簿謄本の発行日時。
  3. 競売開始・差押え時における、先の貸主に預けた保証金(敷金)の確保。
  4. 新しい買受人との店舗契約交渉。
  5. 明渡を余儀なくされた場合の有利な退去準備。